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マーケティング戦略

マーケティング戦略の正しい立て方——施策より先に「誰に・何を・なぜ」を決める

2026年6月20日 8分で読める
マーケティング戦略の正しい立て方——施策より先に「誰に・何を・なぜ」を決めるのアイキャッチ

施策から入ると、なぜ遠回りになるのか

「まずはInstagramを始めよう」「とりあえず広告を出してみよう」——集客に悩んだとき、多くの事業者がまず考えるのは「何をやるか」です。ですが、そこから手をつけて数か月で息切れするケースを何度も見てきました。

図解

戦略から施策へ落とす順番


  1. 誰に
    具体的な状況と困りごと

  2. 何を
    相手に提供する変化

  3. なぜ自社か
    選ばれる根拠と一貫した姿勢

  4. どう届ける
    顧客がいる接点から施策を選ぶ

施策名を決める前に、誰に・何を・なぜを揃える。

ある地方の工務店の例です。「若い世代への認知を広げたい」という理由だけでInstagram運用を始め、投稿は毎日欠かさず続けたものの、フォロワーは増えても問い合わせにはつながらず、半年で担当者が疲弊してやめてしまいました。原因は明確で、「誰に届けたいか」を決めないまま「何をやるか」を先に決めてしまったことです。

似たようなことは、士業やクリニックでもよく起きます。あるクリニックは「認知度を上げたい」という理由だけで広告予算を組みましたが、実際に来院しているのは近隣の高齢者層で、広告が想定していた若年層とはまったく違いました。手段を先に決めると、投じた費用がそもそも顧客ではない層に届き続けてしまうのです。

戦略とは、いわば旅の地図のようなものです。地図がなくても歩き出すことはできますが、目的地にはたどり着けません。施策とは、地図が決まったあとに選ぶ移動手段にすぎないのです。地図なしに移動手段だけを選んでも、速く進めるほど目的地から遠ざかることさえあります。

「誰に・何を・なぜ」の3点整理

施策を考える前に、次の3つを言葉にしてみてください。

  • 誰に:具体的にどんな人が、どんな状況で困っているか
  • 何を:その人にどんな価値を提供できるか
  • なぜ:数ある選択肢の中で、なぜ自社が選ばれるべきか

先の工務店の例で言えば、「若い世代」ではなく「築30年の実家を相続し、リフォームすべきか建て替えるべきか判断がつかない30〜40代」まで具体化できていれば、Instagramより先に、判断材料をまとめたブログ記事や無料相談会の方が響いたかもしれません。ターゲットの解像度が上がるほど、選ぶべき施策も自然と絞られていきます。

ポイントは、3つとも同じ抽象度で書かないことです。「誰に」は具体的な一人の顔が浮かぶまで絞り込み、「何を」はその人が言葉にできていない悩みまで踏み込み、「なぜ」は競合が言っていないことを探す——というように、それぞれ掘り下げ方が異なります。

「うちは商材が特殊だから、そんなに綺麗に言葉にできない」と感じる方もいるでしょう。ですが、言葉にできないということは、社内でも認識がバラバラなまま施策を進めている可能性が高いということでもあります。粗くてもいいので、一度書き出してみることに意味があります。書いてみて初めて、実は営業担当と広報担当で「誰に」の認識がずれていた、ということに気づくケースも少なくありません。

3C分析への入口

「誰に・何を・なぜ」を考えるときの土台になるのが、顧客・競合・自社を見る3C分析です。ここで重要なのは、3つを同じ深さで調べようとしないことです。多くの中小企業は自社分析にばかり時間をかけ、顧客の実態や競合の動きを軽視しがちです。

まずは顧客——実際に困っている人の生の声——から始めることで、「何を」の解像度が一気に上がります。既存客に「なぜうちを選んだのか」を3人に聞くだけでも、社内の思い込みとのズレに気づくことは少なくありません。次に競合を見るときは、機能や価格の比較ではなく「顧客からどう語られているか」に注目します。口コミサイトやSNSでの言及のされ方には、社内資料には出てこない生きた情報が詰まっています。

自社分析は最後で構いません。顧客の困りごとと競合の弱点が見えてから、自社に何が提供できるかを考える方が、机上の空論になりにくいためです。あるハウスクリーニング業者は、この順番で3Cを整理したところ、自社では「価格の安さ」を強みだと思っていたのに、実際に顧客が比較していたのは価格ではなく「作業員の対応の丁寧さ」だったことに気づきました。自社目線の強みと、顧客が実際に見ている評価軸は、想像以上にズレていることがあります。

3Cは一度やって終わりにする必要もありません。半年に一度、特に顧客の声だけでも見直す習慣をつけておくと、市場の変化に気づく最初のサインになります。

戦略から施策への落とし込み方

「誰に・何を・なぜ」が言葉になって初めて、「どうやって届けるか」という施策の話に進めます。SNSか、広告か、紹介か——選択肢は戦略が決まったあとに絞られるべきものです。

例えば、ターゲットが「忙しくてじっくり比較検討する時間がない経営者」であれば、SNSで日々接点を作るより、信頼できる人からの紹介導線を整える方が効果的かもしれません。反対に「情報収集をじっくり行う慎重派」であれば、コラムのようなストック型のコンテンツが向いています。

あるBtoB向けのシステム会社は、この整理をした結果、それまで力を入れていたSNS運用の優先度を下げ、業界特化のオウンドメディアに切り替えました。ターゲットである情報システム部門の担当者が、SNSではなく検索経由で情報収集する層だと分かったためです。施策を変える前に、まず「誰が、どこで情報を探すか」を確認する価値はここにあります。

施策を選ぶ際は、1つに絞る必要もありません。ただし、複数の施策を並行するときも、それぞれが「誰に・何を・なぜ」のどの部分を担っているかを意識しておくと、後から振り返ったときに「なぜこの施策をやっているのか分からなくなる」という状態を防げます。

もう一つ見落とされがちなのが、社内での共有です。「誰に・何を・なぜ」を一人だけが理解していても、営業担当・制作担当・広報担当がそれぞれ違うイメージを持ったままでは、対外的な発信は結局バラバラになります。決めた3つの言葉は、必ず関係者全員が見返せる場所に残しておくことをおすすめします。口頭で共有しただけでは、数か月後には少しずつニュアンスがずれていきます。

まとめ

施策から手をつけること自体は、悪いことではありません。ただ、うまくいかないときほど「何をやるか」ではなく「誰に・何を・なぜ」に立ち返ってみてください。そこが曖昧なままでは、どんな施策を試しても同じ壁にぶつかります。まずは紙に「誰に・何を・なぜ」の3行だけ書き出し、それを見ながら今やっている施策が本当に合っているかを見直してみることから始めてみてください。

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